今年も六甲ミーツ・アートが開催! 夜の六甲山や有馬温泉を楽しむプログラムが新登場。
9月12日から始まった「六甲ミーツ・アート 芸術散歩」は今年で11回目になる現代アートの展覧会。屋外での展示も含め、六甲のさわやかな空気の中でアートを味わえるイベントです。この芸術祭で10月17日から「ザ・ナイトミュージアム〜夜の芸術散歩〜」というプログラムが加わりました。また、六甲からほど近い有馬温泉では「有馬アートナイト」というイベントも。いずれも11月23日まで、六甲山と有馬温泉の各所で楽しめます。
「ザ・ナイトミュージアム〜夜の芸術散歩〜」会場の一つとなっている「六甲高山植物園」に行くと、提灯を渡されます。これは髙橋匡太さんの作品「Glow with Night Garden Project in Rokko提灯行列ランドスケープ」の一部なのです。ときどき色が変わる提灯を持って植物園内の特定のエリアまで歩いていくと、それまでばらばらに光っていた提灯の色がシンクロし始めます。何か不思議な一体感を覚えるアートです。
ほんわかした気分で提灯を持ったまま先へ進んでいくと、ふいにぎょっとさせられるものが。木に白い顔面が取り付けられていて、私たちに呼びかけているのです。これはアーティストの谷澤紗和子さんと小説家の藤野可織さんのユニットによる作品です。夜の闇に大きな顔だけが浮かび上がる、その光景だけでも充分に怖いです。顔にはびっしりと「さあにげておいで。」「ここはあんぜん。」などと書かれているのですが、どう考えても安全とは思えません。幽霊や怪談が好きという藤野さんらしいテキストです。
ナイトミュージアムのもう一つの会場である「六甲オルゴールミュージアム」の庭にはアートユニット、CLEMOMOの作品「Survivor Grandma」が。逞しい脚を持つ四つ足の動物におばあさんが乗っています。このおばあさんは六甲山の歴史の象徴なのだそう。六甲山は江戸時代に乱伐ではげ山のようになってしまい、明治期になって植林で緑が甦るなど、今の姿からはちょっと想像のつかない過酷な歴史を生きてきました。おばあさんはどんな災難にも立ち向かえるよう、完全装備しているのです。
有馬温泉で開催されている「有馬アートナイト」では街中のあちこちにあやしく光る何かが。中島麦さんと岡本啓さんの協働作品です。光らせているのは有馬温泉の豊富な湯を噴出している泉源です。場所によって赤く光ったり、色が変わったりするところも。この泉源は有馬温泉の命ともいえる場所。街の人たちが定期的に掃除したりして大切にしています。もくもくと立ち上る湯けむりは見るだけでも旅の疲れを癒やしてくれそうです。
ここではぜひ、スマホに「有馬アートナイト」のアプリをダウンロードしてください。街中にいくつかあるwi-fiスポットでのDLがお薦めです。そのアプリ上のマップに現れるスポットでスマホをかざすとAR作品が出現します。オーロラのようだったり、光の帯が延びてきたりといったパターンはアーティストが制作した実際の作品を元に作られているそう。手のあとが残る作品がスマホの画面の中に現れて街の景色と融合します。
有馬温泉は「六甲ミーツ・アート」のサテライト会場にもなっています。山の中腹にあるテニスコートには木材とロープで作った巨大な人が。有馬温泉でいい湯だな、とくつろいでいる巨人のようにも見えます。これは木村剛士さんの作品。ほとんど直線のみで形作られた、コンピュータで作った3Dデータのようにも見えるオブジェです。
六甲山、安藤忠雄設計の「風の教会」は通常非公開ですが、「六甲ミーツ・アート」期間中は山城大督の作品「《Monitor Ball》ver. Rokko」の展示会場となっており、中に入ることができます。山城さんの作品は六角柱に六甲で撮影した空や山の風景が映し出されるというもの。六甲の自然を閉じ込めた結晶のような作品です。
「六甲ミーツ・アート」会場の一つ、「六甲スカイヴィラ 迎賓館」は宿泊施設として建てられましたが、この10年近く使われてこなかった建物です。この建物では神戸を拠点にするNPO「C.A.P.」がおよそ30組の作家をコーディネート、「六甲イカスヴィラ」というアートセンターに作り替えました。
ここで展示されている大塚奈緒子さんの「カビテラリウム」はカビを素材にした作品。ガラスの瓶やケースの中にカビが生えています。カビはブルーチーズや味噌、醤油などを作るのにも貢献してくれる生き物です。嫌われ者のカビには本当はこんな有益な面もたくさんあることを知って欲しい、という思いからこの作品が作られました。こんなふうにインスタレーションされていると、意外にかわいいヤツに思えてきませんか?
「六甲ミーツ・アート」、六甲有馬ロープウェーの六甲山頂駅にはどこか懐かしい遊園地が出現しました。竹内みかさんの作品「センチメンタルパーク駅 ―追憶の中の楽園―」です。素材は「メロディーペット」という遊具。上にまたがってお金を入れると楽しいメロディーを奏でながら前に進みます。ハンドルで左右に曲がったり、ボタンでバックしたりと運転も自由自在。アーティストが展示会場にいる場合は実際にお金を入れて乗ることもできます。いいトシしてはしゃいでいるとぬいぐるみの視線を感じるような気がすることも。幼心に帰るうきうきした気分と同時にどこかもの悲しい、あるいは怖い気持ちにもおそわれます。
今回、新しく「六甲ミーツ・アート」の会場に加わった「六甲山サイレンスリゾート」は1929年に開業した阪神間モダニズム建築の一つ、「旧六甲山ホテル」の旧館を改修した施設。改修にはイタリアのデザイナー、ミケーレ・デ・ルッキが参画しました。阪神間モダニズムとイタリアンデザインが組み合わされて、階段やアーチが美しい端正な空間になっています。ここでは4組の作家が作品を展示しています。それぞれにエネルギーが充満した、いい意味でクラシックな建物と衝突する作品です。
六甲ミーツ・アートはどちらかというと若手作家が多く、思いがけない才能に出会う楽しみがあります。海を見下ろす山というロケーションも魅力です。今年は濃い茶色のお湯が気持ちいい有馬温泉での作品が加わって、さらに幅が広がりました。山や温泉に泊まって、ゆっくり楽しみたい芸術祭です。
『六甲ミーツ・アート 芸術散歩2020』
開催期間:開催中〜2020年11月23日
開催場所:六甲山上施設全12会場
開館時間、休館日、入場料などは公式サイト参照
『六甲ミーツ・アート 芸術散歩2020 ザ・ナイトミュージアム』
開催期間:2020年10月31日〜11月23日
開催場所:六甲オルゴールミュージアム、六甲高山植物園、六甲ガーデンテラスエリア
開館時間、休館日、入場料などはサイト参照
『有馬アートナイト』
開催期間:開催中〜2020年11月23日
開催場所:有馬温泉市街地各所
17:00〜22:30、入場無料。詳細、アプリのダウンロードは公式サイトを参照